○平成15年度 行政書士過去問題集・教養○
第1問目
問題43 次の文章の主旨と合うものは1から5のうちどれか。
本来、自然とは非常に多数の種が複雑な関係をもって共存しているものである。それが、たった一つの種にすぎないヒトによって大幅に
かき乱され、生態系の構成が世界各地で極端に単純化しつつある。特に熱帯多雨林には、膨大な種類の多様な生物が生存してきたが、
今日その実態をほとんど知られることもなく、各地で森林まるごとが絶滅するようなこともおこっている。個々の生物種はどれも長い歴史
の進化を背負った存在であり、ひとたび絶滅してしまったら決して蘇ることはない。それゆえ、わたしたちは子孫のためにも自然を保護す
る必要があるのだろうし、もうこれ以上生物を絶滅に追い込んではならないだろう。
ところで、私は自然保護の原点は、ありのままの自然の中身をより多く知る努力をすること、そして、その中から科学的論理を引き出す
ことであると思っている。未知のものを解明しようと努力することで、そのものの大事さがわかってくると思うからである。
かわいそうだから、惜しいから、きれいだから、懐かしいから、かわいいからといったような感情から発した運動も大いに自然保護の効力を
発揮しよう。しかし、そのような感情に立脚する論は、ときに他者を説得する力強さに欠ける場合がある。野外の自然のなんたるかを、
現場に踏み込んで探求する努力があってこそ、他者を説得する論理が出てくることであろう。自然保護を考えずに無神経に開発を進めるよ
うな人々に対しては、こうした実地研究を踏まえた科学的な論理こそが、有効な反駁の武器となるのではないだろうか。
(出典 松本忠夫「生体と環境」)
1 人間の持つ力により、自然の生態系の構成は単純化されている。その単純化している現在の自然は管理がしやすいから、
この方向で自然は保護すべきである。
2 実地踏査をもとにした科学的論理は、開発に反論する大事な実践である。そのとき自然が単純な生態系であれば、
科学的な論理を導きやすい。
3 生物の各種は、長い進化の歴史を背負い、現在は相互の関係のなかで安定している。しかし、人間はその構造を変える文化的発展を挙
げているのだから、その力を持っていることを十分に利用し、自然保護をしっかりと考えるべきである。
4 自然保護の最も重要な動機付けとして、人間の内面に関わる働きを挙げることができる。自然を保護することはこれを慈しむ心を
持つことであり、人間的感情生活を豊かにすることにつながっている。
5 人間は、自然の生態系のなかで、他の種との複雑な関係を保ちながら今日まで存在してきた。そうした自然のあり方を直接認識しよう
とする努力の結果として得られた科学的論理こそが、開発に対する感情的な反対論を有力に補強し得る。
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